ご挨拶

今後の活動に対する抱負について
連合代表 藤崎憲治(京都大学名誉教授)

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 2010年7月24日にわが国の昆虫学関係の14学協会の参加を得て、日本昆虫科学連合の設立総会が開催され、日本昆虫科学連合は発足しました。現在では、さらに2つの学協会の参加を得て16学協会になっております。私はこの度、初代代表の山下興亜先生の後任として、本連合の代表に選出されました。昆虫科学の発展と社会的貢献という設立の基本趣旨を踏まえ、非力ではありますが役職を果たす所存であります。
 日本昆虫科学連合は日本学術会議応用昆虫学分科会との共催で、これまで3回にわたるシンポジウムを開催してきました。参加学会を代表する若手研究者による先端的研究が発表され、昆虫科学の多様性とその奥深さを改めて感じることができました。一連のシンポジウムが異なる学協会の会員間での相互理解と学際的研究の必要性についての認識を新たにしたことは間違いないように思われます。しかしながら、今後の活動としては、これまでのような学術的交流だけでなく、学協会にまたがる諸問題についての認識を共有し、それらの解決を図っていくことが肝要になっていくものと思われます。
 現代においては、気候温暖化、環境汚染、土地開発、侵入生物といった環境問題がますます深刻な問題になりつつあります。その中で人類に対する生態系サービスの根幹を成す生物多様性は大きく失われつつあります。昨年3月には、大震災時の原子力発電所の爆発による放射能汚染といった未曾有の災害も起こりました。昆虫は人類にとって感染症、農業生産、有用資源・バイオミメティクス、文化・教育といった場面で大きな関わりがありますが、それらの関係性は大環境変動下で大きく変遷しつつあります。このような状況を踏まえ、日本学術会議応用昆虫学分科会では、2011年7月28日において「昆虫科学の果たすべき役割とその推進の必要性」という報告を作成し、公表しました。そこでは、昆虫分類学の現状と展望、昆虫媒介性感染症への対応、昆虫産業と異分野連携、昆虫を教材とした教育といった4つの大きな課題についての報告と提言がなされました。日本昆虫科学連合としても、これらの課題や将来ビジョンを踏まえたテーマ別シンポジウムを開催することにより、問題意識を共有していく必要があります。それと同時に、このような課題やテーマを、書籍の出版やサイエンスカフェ、あるいは昆虫科学教育を通して、一般市民にアピールしていく必要があるものと思われます。一方、本連合は昆虫科学に関わるオールジャパンの組織として、国際昆虫学会議(ICE)などの国際的組織の窓口として、国際的貢献を果たしていくことも求められています。
 このように、日本昆虫科学連合が将来にわたって果たすべき役割にはきわめて大きなものがあります。学術会議や関連の連合体とも連携しながら、それらを着実に果たしていくための新たな展開を図ることが、この二期目のミッションであると思っています。どうぞよろしくご指導とご支援のほどをお願いいたします。